ひとそれぞれの祈りがあり、
それはとても固有的で不可侵なものである。
「物語」はそれらを超えて人の心に届く、最高のメディア。
近年、家制度が薄れ、少子高齢化が進展するなかで、お墓参りや仏壇に手を合わせるなどの行為そのものが疎かになりつつある。本調査(※1)では、そうした社会状況にあってもなお、お墓参りに行き、折に触れ仏壇に手を合わせる子どもたちが少なからずいること、そしてその行為が頻繁で日常化されていればいるほど、他者へのやさしさや思いやり、換言すれば、コンパッションが高くなる傾向にあることが示された。
しかしながら、子どものコンパッションを醸成し高めるためにお墓参りに行く、というのでは本末転倒であろう。「祈る」という行為の根底にある豊かな家族関係や、各家庭に根付いている習慣・文化は一朝一夕にできることではないが、日々の生活の中で意識的に「祈る」ことで脳に「プラスの刺激を日々与えつづけ」ると(中野2011、p56 ※2)、コンパッションが高まり、幸福感が高まっていくことは確かなようである。
まずは、家にお仏壇があるなら、家族一緒に、毎日手を合わせて「祈る」ことから始めてみるのはどうだろうか。
※1 : 尾木直樹・株式会社日本香堂(2015年)『子ども達の「供養経験」と「やさしさ」の関係性』調査 ※2 : 中野信子(2011)『脳科学からみた「祈り」』潮出版社
出典:『子ども達の「供養経験」と「やさしさ」の関係性』調査報告プレスリリース(発行 株式会社日本香堂)